くまにち メディカルインタビュー
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婦人編

2012/4/13掲載
 
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精神的負担が少なくない骨盤臓器脱 表情も暗くなりがちに…
 
慈恵病院産婦人科医師
蓮田 健氏
九州大学医学部卒業
九州大学付属病院、国立病院九州医療センターなどで産婦人科勤務
分娩や加齢などが原因で起こる「骨盤臓器脱」。命にかかわる病気ではないことから、受診や治療をためらう人も多く見られるようです。治療法などについて、詳しく話を聞きました。

 ■「骨盤臓器脱」とは、どのような病気なのですか?
 子宮や膣、膀胱、直腸などが下がってくる病気を、骨盤臓器脱と呼びます。これらの臓器を支える筋肉や靱帯がお産でダメージを受け、弱くなってしまうのが原因として挙げられます。症状としては、「下がった感じがする」「陰部に何かはさまっている」などのほか、「おしっこが出にくい」「便秘がち」といった泌尿器、消化器の症状を伴うこともあります。

 ■治療法について教えて下さい。
 治療にはペッサリーと呼ばれるリングを膣の中に挿入し子宮や膣を支える方法と、ポリプロピレンと呼ばれる素材でできた網状の補強材を、膣の裏に埋め込む「メッシュ手術法」があります。短い手術は30分ほどで終わりますが、長い場合は2時間半に及びます。手術を受けられる方は、60代から70代の方が大半です。手術での出血量は50〜100g程度。特に大手術というわけではありません。

 ■では、比較的リスクの低い手術と言えますか?
 そうですね。しかし、80代以上になると体力の低下や内科的な持病の合併率も高く、命にかかわる病気ではないことから、手術を行わない選択肢もあります。一方、骨盤臓器脱の症状が強く、他の治療法がない方に手術を行った場合、むしろ手術後の体力が回復し、精神的にも明るくなり、生活の質が向上するというメリットもあります。

 ■命にかかわる病気ではない分、判断が難しいですね。
 高齢者の場合は、リスクを避けるためにも手術を行わず、「うまく症状と付き合いながら様子を見て下さい」と対応するのも、やむを得ないと思います。しかし、「股の間にはさまり、こすれて痛い」「歩きにくく、買い物に出るのもおっくう」「好きな旅行に行かなくなった」といった声を聞くと、患者さんの抱える症状のつらさは、私の想像を上回るものだと思います。骨盤臓器脱の症状をお持ちの方は表情も暗くなりがちです。手術後、表情がとても明るくなった患者さんも少なくありません。大げさと思われるかもしれませんが、「新しい人生が始まった」と喜んで退院される方もいらっしゃいます。

 ■手術を受ける目安があれば教えて下さい。
 症状が軽い場合は、さほど気にする必要はありませんが、症状が重くなると、精神的に過度のストレスがかかると思います。そのため、「症状がつらくなった時」が、手術の目安とお伝えしています。



 
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