くまにち メディカルインタビュー
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脳神経外科編

2015/9/25掲載
 
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「特発性正常圧水頭症」による歩行や認知の障害は手術とリハビリで改善が可能に
 
熊本託麻台リハビリテーション病院
村上雅二氏
 歩行障害や認知症を引き起こす高齢者の特発性正常圧水頭症(iNPH)。手術により症状の改善が期待できるそうです。iNPHの特徴や症状、治療法について聞きました。

 ■iNPHとは。
 脳内の髄液の産生と吸収のバランスが崩れ、頭に水がたまる病気です。脳室(脳内の部屋)や脳表に水がたまり、脳が圧迫され、脳血流が悪くなることで、足が前に出にくい、意欲が低下し物忘れがある、尿失禁などの症状が現れます。原因は分かっていませんが、高齢者に多く、65歳以上の100人に1人は発症の可能性があるといわれています。

 ■パーキンソン病やアルツハイマー病との違いは。
 歩行に障害が出るパーキンソン病では小股で歩くのに対し、iNPHでは足を開き、狭い歩幅で歩くのが特徴です。アルツハイマー病のような記憶障害も初期にはありません。ただ、これらが併存していることもあり、髄液の流れは改善されても症状の改善が不十分な場合があります。そこで、最近では脳血流を調べたり(脳血流スペクト)、パーキンソン症候群の検査(ダットスキャン)を手術前に行い、治療の効果を吟味・検討した上で、本人、家族と相談して治療方針を決めます。

 ■治療法はありますか。
 髄液の調整を行うシャント術という手術が有効です。髄液の量を調整するバルブ付きのカテーテルを皮下に埋め込み、過剰にたまった髄液を腹腔(ふっくう・腹部の隙間)に流し、症状改善を図ります。以前は、脳にカテーテルを通し、髄液の調節を行う脳室腹腔シャント術が主流でしたが、近年は腰の髄腔から髄液を流す腰椎腹腔シャント術の症例が増えています。脳室腹腔シャント術に比べ体への負担がより少ないので、患者さんやご家族も手術を受け入れやすいようです。

 ■具体的な治療の流れは。
 まずはiNPHかどうかの診断を行います。CTやMRIで脳内の評価を行い、次に、実際に髄液を少量抜いて(タップテスト)、歩行障害が改善するなどの効果があれば手術を考慮します。手術は約1時間。術後は約4週間入院し、髄液の流量の調節をしながら、同時にリハビリに取り組みます。それまで歩けなかった患者さんの筋力は弱っているので、リハビリで体を動かすことが最も重要です。治療後は、意欲が出てきた、足が前に出るようになったという患者さんの声も多数あるようです。手術とリハビリを併用した包括的な治療が行える医療機関は全国でも少なく、経験豊富なスタッフによるサポートがあるかどうかも病院選びのポイントです。iNPHと思われる症状があったら、早めに専門医に相談されることをお勧めします。



 
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