|
|
女性特有の病気「骨盤臓器脱」 進化する手術法で、体への負担を軽減 |
|
|
 |
|
慈恵病院 医師
藤本 英典氏
九州大学医学部卒。九州がんセンター婦人科、県立宮崎病院産婦人科医長、別府医療センター産婦人科医長を経て2012年より慈恵病院産婦人科勤務 |
|
 |
あまり知られていない「骨盤臓器脱」という病気。実際には多くの女性が症状に悩まされていながら、命にかかわる病気でないことから、受診をためらう人が大半なのだとか。治療法などについて、詳しく話を聞きました。 |
 |
膀胱、子宮、直腸などの骨盤内にある臓器が、通常より下がり、腟から体外に脱出してくる病気のことです。骨盤の底でハンモックのように骨盤内の臓器を支える「骨盤底筋群」が、出産などによって引き伸ばされ、閉経後、女性ホルモンの減少でさらに支える力が弱くなると症状が現れます。お腹に力のかかる作業をする人、高齢者、肥満・便秘がちな人、呼吸器疾患により慢性的に咳をする人などに生じやすいといわれています。 |
|
 |
 |
軽いレベルでは「違和感がある」「何か触れる」など、“下がってくる感じ |
|
 |
 |
軽症の場合「骨盤底筋体操」や「ペッサリー」というリング状の器具を腟内に入れ、臓器のたるみを防ぐ方法があります。重症ならば、手術が必要です。従来行われてきた手術法では、20〜40%の高い再発率が問題となっていて、近年ではTVM手術(メッシュ手術)が行われるようになりました。これは、下がった臓器を持ち上げ、弱くなった筋肉や靭帯の代わりに、腟の壁と臓器の間に人工素材で編んだ網(メッシュ)を入れて補強する手術のことです。日本でも2005年から導入され、主流となりました。 |
|
 |
 |
日本での解析によると、メッシュ手術の向き、不向きが分かってきました。そのため、年齢、性交渉・子宮の有無、骨盤臓器脱のタイプなどで、最適な手術法を選択しようという試みが広がり、“何でもかんでもメッシュ”という時期から変わりつつあります。例えば、腟の切り口をお尻の骨の仙骨という部分に固定し、腟を引き上げる「仙骨腟固定術」という方法では、以前は開腹していたので、体への負担が大きく、あまり積極的に行われていませんでした。しかし近年、腹腔鏡やロボットを用いた術式が開発されるなど、医療の進歩により体への負担が軽減。欧米では主流となっています。日本では、取り組んでいる施設はわずかですが、今後普及していくでしょう。腟式メッシュ手術も、メッシュの面積を小さくしたり、新しい手術器具を導入することで、より安全で体にやさしい手術へと改良が行われています。今後は、専門医と相談し、自分に適した手術法を選択する時代が来ると思われます。 |
|
 |
|
|
 |
|
|