くまにち メディカルインタビュー
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眼科編

2015/11/27掲載
 
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目の難病に画期的な「抗VEGF療法」 治療によって視力が回復した例も多数
 
岩上眼科 院長
岩上 英一氏
網膜静脈閉塞症、強度近視、糖尿病網膜症など目の難病治療は、病状の進行防止が精いっぱいとされていました。しかし、画期的な「抗VEGF療法」の登場により、回復例が出ています。専門医に詳しく聞きました。

 ■「抗VEGF療法」はどのような病気に効果がありますか。
 まず、網膜の静脈が詰まって血液が網膜内に流れ出し、水分がたまって黄斑部がむくんだり(黄斑浮腫)、出血したりする網膜静脈閉塞症です。網膜の根元(網膜中心静脈)または枝分かれ部分(網膜静脈分枝)が詰まって発症し、急に視力が低下する、かすんで見えにくくなる、黒っぽく見える部分ができるなどの症状が出ます。次に、網膜や脈絡膜に負荷が掛かり、眼底に新生血管が発生するなどの異常が生じる強度近視。新生血管はもろいので網膜の下に血液や水分がたまりやすく、視覚障害や視力低下の原因となります。また、糖尿病網膜症も新生血管の発生・破裂が原因で発症するもので、視力の低下や黒い虫のようなものが動いて見える飛蚊症などを引き起こします。

 ■検査方法はあるのですか。
 基本は目の奥に光を当て、網膜を直接観察する眼底検査で網膜の血管の様子や出血、むくみ(黄斑浮腫)の状態を診ます。また、OCT(光干渉断層計)で網膜の層構造を断面的に観察し、むくみの状態を調べる検査も有効です。いずれも痛みはなく、短時間で済む検査です。

 ■抗VEGF療法はどのような点が画期的といわれるのですか。
 抗VEGF療法は最近用いられるようになり、高い効果をもたらしています。体の中にはVEGF(血管内皮増殖因子)という物質があり、これが網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫や強度近視、糖尿病網膜症の新生血管の増殖に関与しています。抗VEGF療法は、そのVEGFの働きを抑制する薬剤を眼内に注射する治療法です。特に、網膜静脈閉塞症で静脈から網膜に漏れた血液や水分を除去する場合に、高い効果が得られています。網膜静脈閉塞症ではレーザー治療やステロイド薬の注射などの治療法もありますが、水分の除去については抗VEGF療法の出現で状況が一変したといえるでしょう。また、従来の治療法は症状を現状維持し、進行を食い止めるのが精いっぱいでしたが、抗VEGF療法を受けた人の中には視力が回復した例も数多く見られるようです。

 ■治療は誰でも受けられますか。
 現状の大きな課題は治療費が高額なことです。1回の治療に5万円程度を要し、病気の種類と症状により治療回数も異なります。ただ、自治体の補助制度が設けてありますので、治療を受けたい方は一度、かかりつけの眼科医に相談の上、ご検討ください。



 
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